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[業務効率化]ITを道具ではなく、レストランのような「サービス」として考えてみた

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Author - 谷誠之/ITmedia

例えば「イス」と「レストラン」の違いは何か? それは全社が24時間365日の稼働を求められる「道具」であるのに対し、後者は深夜および休日は閉店する「サービス」であることだ。この違いを理解すると、ITサービスを理解する近道となる。

道具としてのITという考え方は、もう古い

ITIL V3における「サービス・ストラテジ」の書籍は、抽象的で難解であるように感じる。それは「ITサービスを成功させるためにはこうすればいいですよ」ということが、ほとんど書かれていないからである。しかし「サービス・ストラテジ」はこの後に続く「サービスデザイン(ITサービスの設計)」、「サービストランジション(ITサービスの導入)」、「サービスオペレーション(ITサービスの運用)」、そして「継続的サービス改善(そのものズバリだ)」を間違いなく実施するための土台である。「そもそも、ITサービスとは何なのか」という部分に言及して書かれている。

「サービスとは何か」――これは、会社の経営者や組織の運営者にとってさえ重要な問題である。利益やコスト削減のみを追及し、事業顧客(いわゆるお客様)に対するサービスの基本を忘れ、それが露呈した段階で衰退していった会社や組織がどれほど多いことか。

ITが、企業活動において「なくてはならない存在」になって、かれこれ20年ほどが経過した。実際には、ビジネスにコンピュータが使われるようになった歴史はもっと長いが、大企業がホストコンピュータやオフコンと呼ばれるシステムを本格的に導入し始めたのが1980年頃、中堅企業がWindows システムを中心としたクライアント/サーバシステムを導入し始めたのが1990年後半、と考えればそんなものだろう。

しかしこの20年間、IT資産(ハードウェアやソフトウェアなど)はビジネスにおける「道具」と思われてきた。机やイス、ペンやノート、そろばんや電卓、電話やFAXなどと同じ「ビジネスに必要な道具」だという扱いを受けてきたのである。そのためITシステムの開発は「ビジネスに便利な道具を開発する」という考え方の元に行われてきたし、導入したITシステムの運用も「ビジネスに便利な道具の使い勝手をメンテナンスする」というアプローチで進められてきた。その考え方は、おそらく歴史の途中までは正しかったのだろう。筆者は、インターネットが普及し、様々なシステムが相互に接続されるのが当たり前になった時代、1990年代末から21世紀に入った頃までは正しかったのではないかと考えている。

しかし現在、その考え方は正しくないのだ。道具は使えて当たり前である。壊れて座れなくなったイスは即座に修理することになるし、書けなくなったペンは捨てられる運命にある。道具である以上、そこに存在するからには、いつでも使えなければならない。「毎月20日の、午前2時から午前4時までは座れないイス」なんてあり得ないのだ。

IT資産を道具だと捉えてしまうと、「毎月20日の、午前2時から午前4時までデータベースにアクセスできない」という現象が理解できない。稼働率99.99%、つまり1年のうち8時間は使えないかもしれませんよ、という事態を了承することができなくなる。でも現実はそうである。IT資産は、道具ではないのだ。

ITを、レストランなどと同様な「サービス」と捉える

IT資産(ITIL的には、正しくは『サービス資産』という。ITIL V3における『サービス資産』の詳しい定義は、本連載記事を参照してほしい)は、ビジネスに必要な道具そのものではない。サービス資産が面倒を見ているのは、ビジネス(またはビジネスサービス)ではないのだ。ビジネス(またはビジネスサービス)に対する便利な道具とは、ITサービスのことである。サービス資産のうち、ハードウェアやソフトウェアといったIT資産の部分は、ビジネスに役立つ道具であるITサービスを創出するための材料として働く(図1)。

図1:IT資産とサービスとビジネスとの関係

図1:IT資産とサービスとビジネスとの関係

例えば、飛行機や新幹線などの予約システムを考えよう。航空会社がお客様(ITIL的には「事業顧客」という)に提供するビジネス(またはビジネスサービス)は、飛行機や新幹線などを利用するお客様に対して簡単、便利にチケットの予約ができることである。この「簡単、便利にチケットが購入する」というビジネスサービスにITが道具として直接応えているかというと、実はそうではない。

お客様が簡単、便利にチケットを購入するというビジネスサービスを満足するためには、次のようなことがらを満足する必要がある。

  1. 窓口で空席の確認が数秒で行える
  2. 空席であると分かった時点ですぐに予約ができる
  3. 出発地、目的地以外の場所でも目的のチケットが買える
  4. チケットは現金だけでなく、電子マネーやクレジットカードでも買える
  5. クレジットカード決済の場合は、支払いの手順と与信の手順が連動している
  6. チケットは購入した後日でもキャンセルや予約変更ができる
  7. 上記のことが、窓口だけでなくインターネット経由でも行える
  8. 何らかの不具合が発生しても、お客様を10分以上待たせないようにする
これらは、お客様が簡単、便利にチケットを購入するというビジネスサービスを満たすのに必要な要素である。これらの要素を満たさなければ、ビジネスサービスを提供できない。そして、これらのサービスを実現させるために働きかけるのが、サービス資産である。サービス資産は自らを材料(リソース)にし、より良い手順や仕組み(能力)を使って、これらのサービスに対する「価値」を創出する。創出した価値を具現化したものが、ITサービスである。上記の要素を満たすためには、次のようなITサービスが必要になる。

  1. 全国の窓口に創設された端末
  2. すべての端末とサーバを接続する、最低でも○○bpsの帯域幅を持つネットワーク
  3. 毎秒○○個のトランザクションを処理できるデータベース
  4. すべての窓口ですべての経路が自由な決済方法で購入できるソフトウェア
  5. 発行済みのチケットのキャンセルや変更が自由に行える仕組み
  6. 上記のことをインターネット経由でも行えるようにするための Webサーバ
  7. システムが目指す稼働率は99.999%
  8. 不具合が発生したときの受付窓口や対応のための仕組み
重要なのはこれら「サービス」である。サービス資産は、サービス(正確にはITサービス)に対して直接働きかける。言い換えれば、サービス資産は価値のあるITサービスを創出するために存在するのであり、ビジネスそのものに直接役立つ道具ではない。あらためていうが、ビジネスそのものに役立っている便利な道具とは、ITサービスだ。IT資産は、ビジネスの道具であるITサービスに「価値」という命を吹き込むための材料でしかない。ビジネスにとって重要なのは、ITサービスなのである。

図1の下半分を、ITIL的に書くと図2のようになる。この図は「サービス・ストラテジ」に載っている図そのものである。用語は独自の解釈が必要なので、注意してほしい。「潜在的サービス」とは、サービス資産そのものはまだサービスではない、ということを意味している。サービス資産は、潜在的にサービス(ITサービス)を創造し、価値を吹き込むためのリソースや能力を提供するものである。また「潜在的パフォーマンス」とは、サービスが創出されただけではまだ顧客の役にたっているわけではない、という意味である。創出されたサービス(ITサービス)を顧客が自分の資産として受け入れ、ビジネスサービスの役に立つことでパフォーマンスを生み出す。同様に「潜在的価値」とは、顧客がビジネスサービスを持っているだけでは価値になっていない、という意味である。そのビジネスサービスが事業に対する成果を出すことで、ビジネスサービスは「価値あるサービスだ」といえるようになる。

図2:サービス資産は顧客に価値のあるサービスを提供する

図2:サービス資産は顧客に価値のあるサービスを提供する

図にはないが、最終的にビジネスサービスに価値が認められ、事業にプラスの成果が出ると、それに見合った対価がサービス資源に対して支払われる。それは新たな投資かもしれないし、インセンティブかもしれない。

ITがビジネスに対して道具としての価値を提供するのではなく、サービスとしての価値を提供するものだ、と考えると、色々なことに“つじつま”が合う。例えばレストランはお客様においしい料理を食べさせるというサービスを提供しているが、10時から21時まで、といったサービス時間が決まっている。また、大変残念なことではあるが、親切な店員がいたり、ぶっきらぼうな店員がいたり、サービスレベルがまちまちなことも事実である。

レストランはお客様のニーズに合わせるためにサービス時間を7時から23時に修正したり、顧客満足度を高めるために店員のサービスレベルを一定以上の水準にキープするための研修を行ったりする。ITサービスも同様である。稼働率99.999%だとか、ソフトウェアに不具合があるかもしれないだとか、その不具合を何時間以内に修復することを約束するだとかといったことは、「ITが提供するのはサービスである」ということを前提にして語られるものなのだ。

サービス戦略の定義と構成要素

さて、ビジネスがその目的を果たして利益を得るには、適切なビジネスサービスが提供され続けなければならない。そのためには、どんなビジネスサービスをだれに対してどのように提供するか、という戦略が欠かせない。

同様に、適切なビジネスサービスが提供され続けるためには、適切なITサービスが提供され続けなければならない。そのためには、どんなITサービスを、だれに対してどのように提供するか、という戦略が欠かせない。その戦略に基づいて、どのようなサービス資源が必要なのか、ということを設計するのである。

どのような戦略にも何がしかの方法論がある。ITにおけるサービス戦略もまた然りである。サービス・プロバイダは、様々な制約を受けつつ、その制約の中で与えられた達成目標を実現しなければならないというジレンマを抱える。そのジレンマの中で場当たり的に顧客の要望に応えていては、

図3:サービス戦略の3つの要素

図3:サービス戦略の3つの要素

短期的にはうまくいっているように見えても、長期的にはきっと失敗するだろう。戦略を考える際には、次のように相反する事柄をバランスよく考え、行動する必要がある。

  1. どんな自由があり、どんな制約があるか
  2. どんな優位性があり、どんな欠点があるか
  3. 過去にどのように対応し、将来をどのように予測するか
  4. 変化にどのように適用し、将来の変更をどのように計画するか
ITIL V3において、サービス戦略の基本的な3要素は、以下のとおりである(図3)。

・市場での焦点とポジション

自組織が、どのような市場を狙っているかということと、その市場において自組織のポジションはどこであるか、ということを考える。大きな市場なのか、それとも誕生したばかりの市場なのか。その市場において自組織はそれなりの地位を確立しているのか、それともこれから参入していくのか。 ITサービス・プロバイダに当てはめると、例えば社内で利用する顧客管理データベースをどのように設計・導入・運用するのか、ということを考える際に役立つ。自組織にノウハウがあるかどうか、ノウハウがなくても始める(新規参入)のか、それとも外部のサプライヤに任せるのか、ということを決める試金石となる。

・独自能力

サービスの提供には、サービス資産(リソースや能力)からサービスという価値を創出する部分と、その創出した価値を適切に提供し続けるという部分に関して高い能力が必要になる。これらの能力をどの程度持ち合わせているか、
図4:サービス戦略の4つのP

図4:サービス戦略の4つのP

足りない部分は何か、勝っている部分は何か、ということを明確にする。言い換えれば、外向けには他者(他社のサービス・プロバイダや外部サプライヤ)とどのような差別化ができているかということと、内向けにはどの程度サービスの提供能力(組織やプロセスなど)が単純化されているか、ということである。

・パフォーマンス構造

顧客に最終的に提供するものは、価値のあるパフォーマンスである。サービスを提供することでできないことができるようになったとか、まる1日を要していたことが30分でできるようになったとか、コストが20%削減できた、といったビジネス上の価値を提供することが、最終目標である。サービス資産から創出したITサービスが正しくパフォーマンスを上げているか、サービス・プロバイダ側の自己満足に終わっていないか、パフォーマンスのさらなる向上と改善のためにどのような工夫をしているか、といったことが、顧客に対してよりよい価値を提供し続けることへの基本となる。

また、戦略には4つのPが必要だ、という考え方もある(図4)。

・観点(Perspective)

ビジョンとか、方向性である。例えば「No.1のサービス・プロバイダになる」とか「オンリー・ワンのサービス・プロバイダになる」といったようなものである。そして、それを顧客に示すことも重要である。社内の情報サービス部門だからといって、競争のない世界にいると思ってはいけない。社外によりパフォーマンスの高いサービスがあれば、企業は「コスト削減」という名分でリストラしかねない。

・ポジション(Position)

組織の明確な立場を示す。例えば「高価格・高品質」なのか「リーズナブルだけど品質そこそこ」なのか。「特定の分野におけるスペシャリスト」なのか「広く浅くなんでも扱うゼネラリスト」なのか。提供する価値は、有用性と保証のどちらにより重きをおいているか。もちろん、顧客のニーズを無視してはいけない。

・計画(Plan)

「現状」から「あるべき姿」に移行する手段を表す。高品質なものを(または低コストのものを)どのようにして提供するか、という部分を明確にすることでもある。

・パターン(Pattern)

長期にわたる一貫した意思決定と行動を表す。自組織が決めたポジションを長きに渡って貫きとおす、言い換えれば高品質なもの(または低コストなもの)をいかにして継続的に提供し続けるかといった枠組みを提供する部分である。

このような書き方をすると、「まるで企業が顧客に対して掲げるビジネス戦略ではないか」と思われるかもしれない。実は、まったくそのとおりなのだ。サービス戦略はビジネス戦略にほかならない。ビジネス戦略は、その企業がお客様(事業顧客)に対してベストパートナーであり続けるための方針であり、旗印である。サービス戦略は、サービス・プロバイダが社内外のIT顧客に対してベストパートナーであり続けるための方針であり、旗印である。この2つに大きな違いはない。なぜなら、サービス・プロバイダが提供しているのは道具ではなく、サービスなのだから。



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